以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0486
「水」に点が1つついて、どうして「氷(こおり)」になるのですか?
A
大昔、まだ篆文(てんぶん。篆書)という漢字が使われていたころ、「こおり」を表すのは図の左側ような形をした漢字でした。なにやら「人」が組体操でもしているような形をしていますが、これは氷の結晶の象形文字だとか、氷に現れる筋目の象形文字だとか言われています。
やがて「こおり」を表す漢字は、図の右側のような形へと進化します。これは、先の氷の結晶の象形文字を偏(へん)の位置に、「水」を旁(つくり)の位置に置いた漢字です。氷の結晶だけではシンプルすぎて不安だったのでしょうか、「水」に関係あるんだよ、と強調しているのでしょう。
この漢字は、楷書(かいしょ)では「冰」と書かれます。ここまで来れば、話がだいぶ見えてきましたよね。「氷」という漢字は、この「冰」の「にすい」の部分がちょこっとだけ省略されて、生まれたのでしょう。
Q0156でもご紹介しましたが、ここからわかる通り、「にすい」は氷を表す漢字の変化したものですから、「にすい」を部首とする漢字は、多くの場合、氷と関係がある意味を持っています。たとえば「冷」(つめたい)「凍」(こおる)などです。名付けの漢字として人気のある「冴」(さえる)や「凜」(りん)も、本来は厳しい寒さを意味する漢字です。
さらに話を広げれば、「冬」や「寒」の下部に見える点々も、本来は「にすい」です。言われてみれば、氷と関係する意味を持っていますものね。
蒸し暑い日本の夏。たまには漢和辞典を開いて「にすい」の漢字を探してみるのも、ちょっとした暑気払いになるかもしれませんよ。