当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0299
大分県の「大分」は、どうして「おおいた」と読むのですか?

A

地名の読み方は、子どものころから見慣れていれば見慣れているほど、あらためて「どうして?」と尋ねられると困ってしまうもの。このご質問など、都道府県名であるだけに、質問されると「どうして今までこれを“おおいた”と読めていたんだろう?」と、かえって不思議な気分になります。
「おおいた」という地名の歴史は古いようです。『日本書紀』の中に、景行天皇がここを通ったとき、その土地が広くてきれいなのに感動して「大きい(広い)田」つまり「おおきた」と名付けたという記述があります。これが訛ったのが「おおいた」だ、というのですが、これだけでは、なぜ「大分」と書くのかはわかりません。
『大分県の歴史』(1997年、山川出版社)によれば、「おおきた」というのは、「大きい田」という意味ではないといいます。これは「おお」と「きた」に分けられるべきで、「おお」は「大」でよいのですが、「きた」とは古語で「段」のこと、つまり「大きな段」という意味だというのです。昔、大分市のあたりには段状の田畑が広がっていたのでしょうか、それとも、「段」とは田畑の広さを表す単位でもありますから、やはり広々と広がる田畑を表すのでしょうか。
この「段」とは、高さがあるものを分けて作られるものです。そこで、古語の「きた」は「分」という漢字を使って表されることもありました。そんなわけで、「おおきた」という地名に対して「大分」という漢字が当てられるようになり、読みだけが変化して「おおいた」になった、というわけです。

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア