当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0300
わたしの好きなスポーツ選手は、肩に「猴」という漢字の入れ墨をしています。この「猴」は「さる」と読むそうですが、「猿」とはどう違うのですか?

A

漢字の世界とはまことに広大なもので、『大漢和辞典』の「けものへん」のところだけを探しても、「さる」という意味を持つ漢字は16個も出てきます。ただし、現在でもよく使われているのは「猿」と「猴」くらいで、そのほかはあまりお目にはかからない漢字です。
さて、そんな『大漢和辞典』で「猴」を調べてみると、『説文通訓定声(せつもんつうくんていせい)』という本から、「猴」のうちのおとなしいものを「猿」という、という意味の引用文を載せています。「猴」と「猿」との違いは、前者は騒がしく後者はおとなしい、ということになるようです。
一方、現代中国語の辞典を見てみると、「猿」も「猴」もサル一般を指す点では同じだとされています。しかし、狭い意味では、「猿」はチンバンジーやオランウータンなどの類人猿を指し、「猴」はそれ以外のサルを指すという説明があります。
現代中国語としての意味は、『大漢和辞典』の説明とはちょっと違うようです。でもよく考えてみると、類人猿は種としてヒトに近い分だけ、一般のサルに比べると「動物臭さ」が薄いのでしょうから、「騒がしい」「おとなしい」の違いは、実はそのことを指しているのかもしれません。
他の職業ならともかく、スポーツ選手の場合は、おとなしいよりも野性的で活動的な方がいいに決まっています。そういう意味では、「猴」はふさわしい漢字なのだと言えるのではないでしょうか。

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