以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0032
「匠」という字を漢和辞典で引いても、「たくみ」という読みが載っていないのですが、こう読むのは間違いなのですか?
A
この字は、技術的に非常に秀でた職人さんのことを表す漢字で、その意味では、優れた職人を意味する「たくみ」という訓読みを当てても、なんら間違いではありません。実際のところ、いくつかの漢和辞典を調べてみましたが、どれもみな、「字義」とか「意味」とかいう欄に、この訓読みを載せています。それでも「載っていない」というご質問をいただくのには、それなりの理由があります。
『常用漢字表』では、「匠」の字に「たくみ」という訓読みはありません。この訓読みを持つ字は「巧」だけとなっていて、「たくみ」と書きたいときにはこちらの字を使うことになっているのです。漢和辞典では、通常、『常用漢字表』に記載されている訓読み以外の訓読みは、「字義」「意味」などの欄に掲載して、両者に区別をつけています。これが、一見したところ、「匠」という字に「たくみ」という訓読みが載っていないように見える一因ではないかと思われます。
もともと訓読みとは、漢字の意味が定着したものですから、「定着しているかいないか」の判断によって、訓読みの認定には差がでてきます。『常用漢字表』掲載の訓読みは、いわば文部科学省お墨付きの訓読み、というわけなのです。そのことにどういう価値を見いだすのかは個人の問題ですが、漢和辞典としては、とりあえずそのような情報も提供している、ということになります。