以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0252
「荷役」という熟語は「にやく」と読みますが、「にえき」と読むのは間違いですか?
A
国語辞典を調べると、「にやく」しか載っていないことが多いようですね。この問題を考えることは、つまり、「役」を「やく」と読むのか「えき」と読むのかを考えることになります。
「役」を「やく」と読むのも「えき」と読むのも、音読みです。「やく」は呉音、「えき」は漢音というのが両者の違いで、中国語としての漢字にまでさかのぼった場合、意味的な違いではありません。しかし日本では、古くからこの2つの音読みを、意味によって使い分けてきました。
「えき」と読むのは、「働かせる」「戦争」などの意味の場合です。「使役」「戦役」などが、この例にあたります。これに対して「やく」と読むのは、「割り当て」「仕事」などの意味の場合で、「役割」「配役」「役人」などがこの例です。この使い分けは、日本独自のもので、漢字が本来持っていたものではありませんが、私たち日本人としては、これに従っておいた方がよいと思われます。
さて、そうしますと、「荷役」の「役」はどういう意味かを考えれば、その読み方が決められるということになります。この熟語は、主に船舶などで、荷物の上げ下ろしをする仕事のことを意味しています。この場合の「役」は、「働かされる」という意味だとも考えられますが、「仕事」という意味で捉えておく方が、素直ではないかと思います。「荷役」はやはり、「にやく」と読む方がよいようです。