以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0492
「龍」を4つ書く漢字は画数が多いことで有名ですが、その成り立ちはどのようになっているのですか?
A
Q0026でご紹介した通り、『大漢和辞典』に収録されている漢字の中で、1番画数が多いのがこの漢字で、64画あります。図のように、音読みはテツ、意味は「言葉が多い。多言」となっていますが、残念ながら、成り立ちの説明はありません。
というわけで、この漢字の字源はどうなっているのか、なぜ「龍」4匹で「多言」という意味になるのか、はっきりとしたことはわかりません。ただ、それで終わってしまってはつまらないので、もう少し、推測を広げてみることにしましょう。
『大漢和辞典』の中には、テツと音読みして、この字と似たような意味を持っている漢字が他にもあります。下図の1番左の漢字がその例で、意味は「しゃべりつづける」だと書いてあります。また一方で、図の真ん中のような漢字もあります。この音読みはショウですが、意味は「しゃべりたてる」となっているのです。そしてこの字は、古くは図の一番右のように、「龍」2つの下に「言」を書いたらしいのです。
「龍」2つの漢字は、一般には「龍が飛ぶようす」を表しているとされていますが、龍が並んでいるところから、「重なる」という意味があるという説もあります。この説が正しいとすれば、「龍」2つの下に「言」を書く漢字も、「ことばが重なる」ところから、「しゃべりたてる」という意味となったと説明できることになります。
「龍」4つの漢字は、どうやらこのあたりの漢字と関係がありそうです。もともと古代中国語に、「しゃべり続ける」「口数が多い」という意味を表す、ショウとかテツとか発音することばがあったのでしょう。ショウの方は、「龍」2つの下に「言」を付けて書き表すことになった。それならテツの方は、「龍」をもっと増やして4つにして、その下に「言」でも付けてやろう、でもそれはさすがにあまりにもめんどくさいなあ……、というようなことだったのかもしれません。
推測はこのへんでやめておきましょう。そうしないと、「おしゃべり」はオレの専売特許だよと、龍に怒られてしまうかもしれないですから。