以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0466
「頑」や「殻」の左半分のうち、最後に書く部分は、フォントによって右上にはね上げていたりそうでなかったりするみたいなのですが、手書きの場合はどちらがよいのですか?
A
まずは、問題点を画像で確認しておきましょう。右の赤丸で囲った部分です。これは、手書きと活字との違いというよりは、書きやすさやデザイン上の問題だと思います。
この両方の漢字とも、問題の部分を書くとき、上から下ろしてきた筆を気持ちよく右へとカーブさせて、元気よく真上へとはね上げたいところですが、「頁」や「殳」といった邪魔者があるために、十分なスペースが確保できません。そこで、そのフラストレーションを解消するために、カーブをはしょって一気に右斜め上へとはね上げてみようとする人がいる、というわけです。
以上は、手書きの場合の説明ですが、活字であっても、問題の部分が窮屈であることは同じです。そのため、デザイン上、手書きと同じようにはね上げることがあるのです。
ただ、ちょっととまどうのは、このフラストレーション解消法、いつでも、だれでもが実行している、というわけではないことでしょう。最初にお示しした画像でも、左の明朝体では「頑」だけがはね上げ、右の教科書体では「殻」だけがはね上げています。同じフォントの中でも、一貫していないことが多いのです。
そこを一貫させなさい、というのは、正しい主張ではありますが、現実は常に正しいものばかりとは限りません。字形をめぐる他の多くの問題と同様に、どちらでもいい、と理解しておく方がよさそうです。
だって、正しい、正しいの一点張りでは、息が詰まりそうでしょう?それじゃあ、フラストレーションがたまる一方ですからね。