以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0443
岐阜県の可児市は「かにし」と読むそうですが、「児」を「じ」と読む場合と「に」と読む場合には、何か決まりがあるのですか?
A
「可児」という地名は、相当古くからある地名のようです。その由来については、「曲がる」という意味の古語「かね」から来ているとか、「土」を意味する「はに」と関係があるんじゃないかとか、諸説あるようですが、はっきりしません。語源はともかく、「かに」という発音が先にあって、それに「可児」という漢字を当てたものなのでしょう。
「児」という漢字には、ニと読む場合とジと読む場合の2つの音読みがあります。ニは呉音、ジは漢音と呼ばれる音読みです。この2つの違いは、元になった中国語の発音が、いつごろの時代の、中国のどのあたりの地域のものであったかによって生じた違いで、意味による違いではありません。というわけで、別に意味によって使い分けるというわけではないのです。
読み方が複数あるのに、その使い分けに特に決まりもない。――これは、漢字を使って日本語を書き表す際に生じる、大きな問題点の1つです。決まりがないということは、1つ1つ個別に覚えていくしかないということですから、たしかに困った問題です。
とはいえ、「児」の場合はそんなにあわてる必要はありません。この漢字をニと読むのは、地名の場合などを除けば、ほとんど「小児科」の「小児」くらいのものです。それだけ覚えておけば、「児童」も「育児」も「健康優良児」もみんな、ほとんどジだけで用が足りるのです。
一見、複雑で混沌としているように見えるものが、光の当て方をちょっと変えるだけで、意外と単純に見えてくることがあるものです。漢字の音読みも、そうやって少しでも単純化しながら、少しずつ覚えていくしかなさそうです。