当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0439
「おみおつけ」を漢字で書くと「御御御付」となる、というのは本当ですか?

A

「おつけ」というのは、漢字で「御付」とも「御汁」とも書きますが、本来、食膳に添えるものというところから、碗に入れた汁のことを指すことばです。「お(御)」が付いていることからわかるように、このことば自体、京都の女房言葉に由来する丁寧語です。
それをさらに丁寧にしようというわけで、「御」をもう1つ付けて「御御付(みおつけ)」、それでも足りないともう1つ付けて「御御御付(おみおつけ)」というのが、「おみおつけ」の成立だ、という説は、たしかにあります。
そこで、ちょっと以前は、国語辞典で「おみおつけ」を引くと「御御御付」「御御御汁」と書いてあったものです。この説、おもしろいことはおもしろいのですが、実際のところはどうでしょうか。
「御御足(おみあし)」のように「御」が2つ付くことばはありますが、「御」が3つ重なることばは、他にはちょっと見当たりません。それに、第一、どうしてお碗物をそこまでていねいに表現しなくてはならないのか、その理由からして首をかしげたくなるところがあります。
国文学者・池田弥三郎先生の『暮らしの中の日本語』(旺文社文庫、1980年)に、以下のような記述があります。

おみおつけというのは、東京ではさかんに使うが、これは、お・み・お・つけといって、敬語の接頭語が三つもついているというが、これはそうではなくて、おみというのは女房のことばで味噌のことをおみいというから、味噌のおつけのことが、おみおつけだろう。

というわけで、最近の国語辞典では、「おみおつけ」の漢字は「御味御付」「御味御汁」としていることが多いようです。ただ、「おみおつけ」なんてことばを漢字で書こうとするところに、そもそも無理があるようにも思います。こういうやわらかい響きの日本語は、ひらがなで書いた方がイメージにぴったりくるのではないでしょうか。
なになに?「漢字文化資料館」と名乗ってるくせに、ひらがな書きを推奨するなんてけしからんって?……時と場合によるのですよ、なにごとも。

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