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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0433
「改定」と「改訂」の使い分けを教えてください。

A

いろいろな辞書でこの2つのことばを引き比べてみると、だいたい、次のような説明になっています。
改定従来あったものを、改めて定める。改訂誤りや不備な点などを、正しく改める。以上によれば、「改訂」は「改定」に比べて、「誤りを直す」という意味が強い、と理解することができます。「訂」という漢字には、「正しく直す」という意味がありますから、熟語の意味としては、これで間違いはないでしょう。
ただ、ちょっとドキッとしたのは、このような説明が載っている辞書のほとんどが「改訂版」だった、ということです。文字通りに受け取れば、「前の辞書の誤りを直したのがこの辞書です」と言っていることになります。
それはつまり、前の辞書には誤りがあったことを公然と認めていることになるわけで、正直・謙虚と言えばそれまでですが、大胆と言えばかなり大胆です。
そこで、辞書編集者たちはいったいいつごろから、この「誤りがありました宣言」をしてきたのか、ちょっと調べてみました。「改訂」とうたった辞書のうちで一番古いものは、今回調べた範囲では、『改訂増補詳解漢和大辞典』(服部宇之吉・小柳司気太著、冨山房)。同書には、1926(大正15)年12月付の次のような序文が付いていました。

曩(さき)に本書を公にしてより此に十年、其の間、世態の推移、思想の変化等の文字言語の上に及ぼせる影響亦(また)少なからず。……此等は本書をして現代的ならしめんとするには、決して看過すべからざるものに属す。此に於て本書を改訂するの要を認め、此等を相当の範囲に於て採録せり。

ふむふむ。服部・小柳両先生のおっしゃる改訂の必要性とは、「世態の推移」や「思想の変化」によるものなんだ……。やはり、辞書に載っている「改訂」の意味と、「辞書の改訂」というときの「改訂」の意味との間には、昔からちょっとずれがあったのかなあ……。だったら私だって……。
いけない、いけない!辞書編集者としてはもちろん、「改訂版」なんてあてにしないで、今作っている辞書をよりよくするために全力を挙げるべきなのは、言うまでもないですよね。

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