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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0423
私の周りには「鞄」と「靴」を混同している人が非常に多いのですが、それぞれの漢字はどのような成り立ちをしているのですか?

A

「鞄」は「かばん」、「靴」は「くつ」。「くつ」を手に持ち「かばん」を足に履く人はまずいないでしょう。「鞄」と「靴」を混同する人がいるとすれば、それは漢字の罪だということになるのでしょうね。
さて、「かばん」ということばの歴史は意外と浅く、明治に入ってから生まれたようです。語源には諸説がありますが、おそらく、西洋から入ってきたバッグに対する訳語として用いられるようになったのでしょう。
漢字の「鞄」はというと、本来は皮革職人のことを意味する漢字でした。しかし明治の中ごろから、読んで字のごとく「革」で「包む」ものというところから、「かばん」に対する当て字として用いられるようになりました。ちなみに、この字を「かばん」の意味で用いるのは、日本で生まれた用法です。
一方の「靴」の方は、こちらも明治に入って洋服とともに普及したハイカラなものです。ただ、「かばん」と違って、「くつ」ということばの歴史は古く、『万葉集』の時代からあります。とはいえ、昔は漢字としては「沓」や「履」を当てることが多かったようです。
「靴」という漢字の成り立ちについてはよくわからないのですが、革製の「くつ」が一般化した文明開化の明治には、字形に「革」を含む「靴」がマッチしたのでしょう。やがて「くつ」といえば、原材料が何であろうと「靴」と書くのがふつう、ということになっていきます。
というわけで、もし、「鞄」と「靴」を混同している人を見かけたら、「かばん」はものを包むものだから「鞄」と書くのですよ、と教えてあげましょう。もっとも、「くつ」だって足を包んでいるじゃないか、と言い返されれば、それまでですが……。

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