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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0372
「東風」と書いて「こち」と読みますが、「南風」「北風」「西風」には、このような読み方はあるのですか?

A

これも、Q0310などでご説明した熟字訓です。まず、「こち」という日本語と「東風」という中国語とが別々にあって、両者が同じ意味であるところから、「東風」と書いて「こち」と読む、というわけです。ふつう、訓読みといえば漢字1文字に対して、その意味を日本語で表すものですが、熟字訓の場合は、漢字2文字以上をまとめて訓読みしてしまうです。
さて、ではほかの方角の風にも熟字訓があるのかというと、そうは問屋が卸しません。「南風」については「はえ」という熟字訓がありますが、「北風」「西風」には残念ながらないようなのです。
もともと、風の名前というのは、「ひがしかぜ」「みなみかぜ」といったように、方角に「かぜ」をくっつければ十分なはずです。なのにわざわざ特別な名前を付けるということは、その風が何か特別な意味を持っていることを暗示しています。「北風」や「西風」には、昔の日本人はあまり特別な思いを抱かなかったのかもしれません。
ただし、東北の風と東南の風には、特別な名前があります。前者は「ならい」、後者は「いなさ」といいます。あまり一般的ではありませんが、それぞれ、「東北風」と書いて熟字訓として「ならい」と、「東南風」と書いて熟字訓として「いなさ」と読むこともあるようです。

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