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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0371
『常用漢字表』では「河」の音読みはカだけですが、実際には「山河」「運河」「大河」など、ガと読むことが多いのは、なぜですか?

A

たしかにその通りですね。「河」をガと読む熟語は、他にも「銀河」「氷河」などがあります。逆にカと読む熟語としては、「河川」「河口」「河岸」などを挙げることができます。
ここで気が付くのは、「河」が熟語の頭(1字め)に来るときにはカと読むことが多く、お尻(2字めなど)に置かれる場合にはガと読むことが多い、ということでしょう。これには、Q0337でちょっと触れた「連濁(れんだく)」という現象が関係してきます。
「連濁」とは、あることばの最初の音が、直前に来る音によって濁音に変化する現象です。漢字の音読みの場合、直前に「ン」「ウ」が来る場合に、連濁が生じることがあります(常に連濁が生じるわけではありません)。「山河」「運河」「銀河」はすべて、1字めがサン・ウン・ギンという具合にンで終わっていますから、2字めのカが連濁を起こしてガとなるのです。また、「氷河」は、ウの直後で連濁が起きる例です。
連濁について知っておくと、熟語の頭に来たときには「河」はカと読むのに、お尻に置かれたときにはガと読むことが多いということが、理解しやすいでしょう。そして、『常用漢字表』には連濁についてのきちんとした記述はないので、一般には、連濁で生じる読み方は『常用漢字表』の許容範囲だと解釈されているのです。
しかし、問題は「大河」です。「大」はタイと読みますから、「河」が連濁を起こすはずはありません。これをなぜタイガと読むのかを合理的に説明しようとするのは、なかなかむずかしいようです。漢音・呉音を持ち出して、「河」の音読みは漢音ではカだけど呉音ではガだ、と主張することはできますが、「大」をタイと読むのは漢音なので、タイガは漢音+呉音のごちゃ混ぜ読みとなってしまって、この主張はいまひとつ説得力がありません。
おそらく、「河」が熟語のお尻に置かれたとき、連濁を起こす熟語がたまたま多いことから、「大河」も慣習的にタイガと読まれるようになったのではないでしょうか?習慣は、論理より優先されるのです。

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