以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0339
部首はいったいいくつあるのですか?
A
これまでも何度か触れてきたように、部首というのは、漢和辞典によって違うことがあります。そこで、部首の数はいくつなのかという疑問にも、はっきりとした答えを出すことはできません。
現在、日本で一般的に行われている部首分類は、中国で18世紀に作られた『康熙字典(こうきじてん)』を元にしています。この字典では、部首の数は214ありました。そこで、この数字が、部首の数はいくつなのかという問いかけに対する、基本的なお答えにはなります。事実、小社の『大漢和辞典』でも部首の数は214です。
しかし、部首の中には、現在の私たちからするととてもわかりづらいものもあります。たとえばQ0024で取り上げた、「輝」の部首は「車」である、なんていうのはその1つです。そこで、特に小・中学生向けの漢和辞典では、新たに「光」という部首を立てて、「輝」をそこに収めることもあります。
また、Q0023で取り上げた、「腹」の部首は「肉」である、なんてのも、わかりにくい部首です。そこで現在では、「腹」の部首を「月」にしている漢和辞典も少なくないのです。何を隠そう、小社の学習用漢和辞典『新漢語林』もその1つです。
そんな事情もあってか、戦後の国語改革の中で、部首の整理が話題になったこともありました。昭和30年代の初めには、新聞・印刷業界で部首を127に整理する案がまとめられましたが、これは一般には普及しなかったようです。
漢字の本家、中国に目を転じると、現在、中国大陸で一般的に使われているのは簡体字と言われる略字体ですから、それを分類するためには、従来の部首ではうまくいかないことがあります。たとえば図の漢字は「業」の簡体字ですが、これは従来の部首ではどうにも分類できないのか、この字自体を部首とすることがあります。
そもそも、初めて部首による漢字の分類を行った、紀元1世紀に書かれた『説文解字(せつもんかいじ)』では、部首の数は540ありました。その後、字書によっては542だったり、160だったりと変化してきました。部首の数というものは、昔から定まりのないものだったのです。