以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0304
「宮」は「宀」と「呂」からできているのに、どうしてロではなくキュウという音読みになるのですか?
A
なるほど。「呂」の音読みはロですから、形声文字の原理に従えば、「宮」の音読みもロとなってよさそうなものです。なぜなのでしょう?
例によって、古い字形にさかのぼることによって、この謎について考えてみましょう。図の左側は「呂」の甲骨文字(こうこつもじ)、右側は「宮」の篆文です。一見してわかる違いは、「呂」の方は四角が2つ、重なり合わずに並んでいるのに、「宮」の方は、重なり合って並んでいるという点です。
一般に、「呂」の2つの四角は脊椎(せきつい。背骨を構成する1つ1つの骨)が並んだ形を、「宮」の方は部屋が並んだ形を表しているとされています。つまり、字源に立ち返った場合、この2つは別のものを表していると考えることができるのです。長い時間の間に変化した結果、同じ形に見えるようになってしまったのです。
このように、漢字の字形は、私たちがよく知っている字では同じに見えても、元を正すと異なっていることがあります。そこが漢字の一筋縄でいかないところ。注意が必要です。