以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0286
「耳」の5画目、一番下の横線は、右に突き出るのですか、突き出ないのですか?
A
例によって、この種の問題は、別の字になってしまわなければどちらでもかまわない問題で、そのことについてはQ0030でも申し上げました。
でも、そればかり申し上げていると、このQ&Aコーナーも書くことがなくなってしまいます。そこで、『常用漢字表』などの規準に照らしてベターなものはなにか、という観点から、すこし解説してみたいと思います。
「耳」という漢字単独では、『常用漢字表』では図のような形になっていますから、問題の部分は突き出る方がよいでしょう。ただし、「聴」や「職」のように「耳」が「へん」になった場合は違って、『常用漢字表』では突き出ない形になっています。また、「聞」のような場合も同様です。ここから判断すると、「耳」の右側に何かある場合には、問題の部分は突き出ない形になるのが自然なようです。
一番問題なのは、「聟(むこ)」「聳(そびえる)」のように、「耳」が漢字の下半分に位置する場合です。常用漢字にはこのタイプの漢字は含まれていないので、『常用漢字表』に照らして判断することはできません。そこで、18世紀の初めに作られて以来、漢字の形の規準として長くよりどころとされてきた『康熙字典(こうきじてん)』を見ると、図のように、突き出ない形になっています。しかしこのタイプは、実際に使われている活字では、突き出ているものも多いのです。
そこで結論としては、「耳」の5画目は、単独では突き出る、右に何かがある場合は突き出ない、漢字の下半分にきた場合はどちらでもよい、というふうに考えておくのが、無難なようです。