以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0227
2004年9月に人名用漢字が大幅に増えましたが、それらの漢字はどうして今まで使用が認められていなかったのですか?
A
人名用漢字を制限していることの背景には、難しい漢字をあまり使わないようにしよう、という考え方があります。人の名前に使える漢字を初めて制限したのは、第2次世界大戦が終わって間もない1946(昭和21)年のことです。この年の末に改正された戸籍法で、人の名前には「常用平易な文字」を用いなければならない、と定められました。
当時は、一般の生活で用いる漢字を一定程度に制限しよう、という考え方が力を持っていました。難しい漢字を多用することは、日本語をわかりにくくし、一般国民の教育を阻害し、結果として民主的な国家の形成を妨げる、という考え方があったのです。第2次世界大戦に敗れ、国家の再生を急務としていた時代にあっては、この考え方がある程度の説得力を持っていたのは確かです。
その結果、1850字の当用漢字が制定されることになるわけですが、この漢字制限は、当然ながら人の名前にも適用されることになりました。戸籍法でいう「常用平易な文字」とは、ひらがな、カタカナ、そして当用漢字であると定められたのです。これが、人名用漢字の制限の始まりです。
それから60年近くが過ぎ、時代は大きく変化してしまいました。漢字を制限することが民主化のために必要だ、というような切迫感はなくなっていますが、コンピュータ時代にあっては、コンピュータで使える漢字の数が、おのずと制限となって表れてきます。現在では、人名用漢字を制限することの意味は、どうやらそのあたりにあるようです。