以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0185
よく国語の授業でも問題になる「雰囲気」という言葉の読みですが、「フインキ」と読むのはやはり間違いなのでしょうか?
A
この問題、むずかしいですよね。「雰囲気」&「ふいんき」でネットで検索を掛けてみると、ものすごい数のヒットがありました。みなさん、気になっているようです。
漢字の読み方、という側面から考えると、「雰」の音読みはフン、「囲」はイですから、当然フンイキが正しい、ということになります。しかし、実際にはフインキと発音している人が多く、仮名で書く場合にはそのまま書いてしまう人も多いようです。ちなみに、「google一本勝負」というサイトでは、この両者がどちらが多いかという対決を行っていて、その結果は「ふんいき」約6,950件、「ふいんき」約5,420件となっていました。
漢字からすればフンイキなのに、どうしてフインキになってしまうのかについては、いろいろな議論があるようですが、根本にはンイという音の並びが発音しにくい、ということがあるようです。そのため、この場合のンの音は、口をしっかり閉じたンの音ではなく、息を鼻から抜くような弱い音になってしまい、そのため、フーイキあるいはフイーキに近い発音となってしまうようです。ここまでくれば、フインキまであと一歩、というわけです。
似たような例としては「全員」をゼイインと発音したり、「原因」をゲイインと発音したりすることが挙げられるそうです。そう指摘されてみると、自分もゼイインと発音しているような気がしてきますし、亡くなったいかりや長介さんも「ゼイイン集合!」と発音していたような気までしてきますから、不思議なものです。
しかし、話しことばとして「全員」をゼイインと発音する人はいても、書きことばとして「ぜいいん」と書くことはなさそうに思われます。とすると「雰囲気」を「ふいんき」と書く人が多いのは特殊な例で、その背景には、「雰」という漢字が、あまりポピュラーではないという事情もありそうです。