当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0175
「七」の読み方には、「しち」と「なな」の2つがありますが、この両者はどう違うのですか?

A

子どものころ、「いち、に、さん……」と声に出しながら数えていって、「なな」のところで、友だちに「“なな”は、ヘンやわ」と笑われた思い出があります。何がヘンなのか、そのときは全く分からなかったのですが、笑われたという恥ずかしさだけが残っています。
それから四半世紀が過ぎて、漢和辞典の仕事をするようになってから、何がヘンなのかがようやく分かりました。「いち、に、さん……」といのは全て音読みで、「なな」は訓読みなのです。つまり、子どものころの私の数え方は、音読みの中に1つだけ訓読みを交えていたわけで、友だちは、その語感の中にヘンなものを感じ取ったのに違いありません。
以上のように、「なな」というのは「七」という漢字の訓読みなのですが、それでは「しち」は何かというと、ご想像どおり、音読みということになります。つまり、「イチ、ニ、サン、シ、ゴ、ロク、なな」と数えるのは、ひっくり返せば、「ひとつ、ふたつ、みっつ……」と訓読みで数えていって、7番目のところだけ「シチつ」と音読みするのと似た状況になります。こちらを想像すると、私の幼年時代の友だちの笑いもむべなるかな、という思いがします。
それにしても、その友だちが漢字の音読み・訓読みについて正確な知識を持っていたわけではないでしょう。彼はその語感から直感的に「ヘンやわ」と感じたわけで、そのことを思い出すにつけて、彼の方が、今の私の仕事にふさわしい人材なのではないか、などと思ってしまうのです……

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