当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0118
漢和辞典では「比」の画数は4画となっていますが、活字の通りに左下を分けて書くと5画になります。漢字テストなどでたいへん困るのですが、どのように考えればよいのでしょうか?

A

似たような問題をQ0029でも取り上げたのでくり返しになりますが、この点はよくご質問をいただく重要な問題なので、あらためてご説明しておきたいと思います。
私たちがふつうに目にしている活字体の漢字と、手書きで書く漢字の間には、細かい点でいろいろな違いがあります。その原因は、手書きで書く場合は、画と画との間のつながり、つまり運筆のしやすさが、できあがりの字体にどうしても影響を与えてしまうのに対し、活字の場合は、そのような束縛からは解放され、なおかつ、活字として美しく見えるよう、デザイン上の配慮がなされているからです。
それはちょうど、英語のアルファベットにブロック体と筆記体の違いがあるのと同じだと考えれば、理解しやすいのではないかと思います。1つの文字が、筆記用具による束縛や、デザイン上の問題からさまざまな形を取りうる、というのは、洋の東西を問わず、ごくごく当たり前の現象なのです。
011801さて、問題の「比」の字ですが、これを活字の通りに書こうとすると確かに5画になります。しかし、手書きの場合には図のように書くので4画となります。5画になるのは、あくまで活字のデザイン上から「そう見える」だけの話ですから、漢和辞典では「比」は4画として数えるのです。
そんなややこしいことはやめて、活字の通りに数えた方がわかりやすいのでは?というご意見もあるでしょう。しかし、Q0029でも例を挙げたように、「比」と同種の問題だけでも「衣」「長」「氏」「卯」などがありますし、さらにそれを構成要素として含む漢字も多数あります。それらのすべてについて画数を変更するのは、これはたいへんなことなのです。
活字のデザインは変化していきますから、今後も、こういった違いが新しく生まれてくる可能性もあります。それらをいちいち取り上げて、その差異を解消していくよりも、手書きと活字の間には差があって当然なのだ、という考えを持つことの方が、よほど簡単で、フレキシブルではないかと思います。

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