以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0150
「しんにょう」を書くとき、2画目は真っ直ぐ下へ降ろして書くのですか、それともひらがなの「て」のように曲線にして書くのですか?
A
お悩みなのは、図のような2種類の「しんにょう」の形についてなのだろうと存じます。そして、結論から申し上げると、真っ直ぐなのは活字体、にょろにょろしているのは筆記体、ということになります。
Q0019やQ0029、Q0118など、これまでにも何回か、漢字にも活字特有の形と筆記特有の形の違いがあることをご説明したことがあります。「しんにょう」の場合もその例なのです。「しんにょう」はそもそも、図のような字がくずれて出来たものなのですが、くずし字の本性として、直線的であるよりは曲線的になりがちです。つまり、「しんにょう」はその発生時から、にょろにょろしていたはずなのです。
ところが、やがて印刷技術が発達してくると、このにょろにょろした形はちょっと厄介ものになります。木版に彫るにせよ、金属活字の母型を彫るにせよ、曲線よりも直線の方が、彫りやすいからです。そこで、印刷物に表れる「しんにょう」は、直線的なものへと変化していったのだと思われます。
そのような事情ですから、手書きで書く場合には、にょろにょろ方式で書く方が由緒正しいといえますし、見た目も美しく仕上がります。しかし、だからといって、印刷物に表れる直線的な「しんにょう」が、間違っているわけではないのです。
アルファベットと同様、漢字にも活字体と筆記体の違いがあるということを、是非とも理解していただければ、と思います。