以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0012
「希望」という熟語は、訓読みすると「まれなのぞみ」となってしまって、ニュアンスが違うような気がするのですが、それでいいのでしょうか?
A
「希」という漢字には、ご指摘の「まれ」という意味がないわけではないのですが、「のぞみ」という意味もあります。「希望」の場合はこちらの意味で、この熟語は似たような意味の漢字が2字組み合わさってできた熟語です。
「まれ」という意味を表す場合、昔は「稀代」「稀少」「稀薄」のように、「稀」という漢字の方を用いることが一般的でした。こちらの字には「のぞみ」という意味はないので、「希」と「稀」を使い分けることで、意味がまぎれることが少なくなります。しかし、第2次世界大戦後の国語改革で、「稀」は当用漢字から外れてしまったので、「希」の字で代用することが多くなりました。そのために熟語の意味がわかりにくくなってしまった例の1つだと言えるでしょう。