以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0002
漢字はだれが作ったのですか?
A
現在のところ、漢字をだれか個人の発明によるものとする説は、あまり一般的ではありません。しかし、伝説の上では、蒼頡(そうけつ)という賢者が漢字を発明したことになっています。
蒼頡はいくつかの文献に登場しますが、それらによると、鳥や獣の足跡を見て、それを残したのがどんな鳥や獣であるかを区別できることに気づいたことから、漢字を発明するに至ったとされています。そして彼が漢字を発明したとき、天から穀物が降ってきたり、夜中に幽霊が泣く声がするなどの天変地異がおこったと伝えられています。
図は、絵に描かれた蒼頡ですが、目が4つあって、とても人間とは思えない姿に描かれています。もちろん、伝説上の人物のことですから、だれも見たことはないはずです。しかしこの図を見ると、漢字を生んだ中国の人々にとっても、漢字というものが神秘的な存在であったことがうかがわれます。
余談ですが、『大漢和辞典』に収録された5万もの漢字の活字をデザインした石井茂吉(いしいもきち)氏(写真植字研究所社長)に、著者の諸橋轍次(もろはしてつじ)博士が贈った書に、「蒼頡、字を製するや、天為(ため)に粟(ぞく)を雨(ふ)らし、鬼為(ため)に夜哭(こく)し、竜乃(すなわ)ち潜蔵(せんぞう)す」というものがあるそうです。諸橋博士は石井氏を、まさに現代の蒼頡とお考えになっていたのでしょう。