当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0408
「南瓜」はカボチャ、「西瓜」はスイカ、なのに「北瓜」や「東瓜」がないのはどうしてですか?

A

「南瓜」も「西瓜」も本来は中国語で、それぞれ中国から見て南方(東南アジア方面)に産する瓜、西方(西アジア方面)に産する瓜を表すことばです。したがって、「北瓜」があるとすればそれはモンゴルあたりの瓜を、「東瓜」があるとすれば、朝鮮半島か日本列島あたりの瓜を表すことになるはずです。
実際、『大漢和辞典』を調べると「北瓜」ということばは存在するようです。「西瓜の別種」とあって、16世紀の終わりから17世紀ごろにかけて書かれた『群芳譜』という本から「実は西瓜に似ているが小さく細長い。とても甘く、西瓜と同じころに実る」という意味の記述を引用しています。西アジア方面との交流は、いわゆるシルクロードを通じてなされ、中国の西北部が窓口でしたから、「西瓜」の一種が「北瓜」という名前だったとしても、おかしくはありません。
ところが、この「北瓜」ということばは、あまり普及しなかったようです。というのは、現代中国語の辞典で「北瓜」を調べると、それは「南瓜」と同じ意味だ、と書いてあるからです。「南」と「北」が一緒だというのは、まったく納得がいかない話ですが、どうやらこちらの「北瓜」はもとは方言のようです。当て字かなにか、複雑な事情があって生まれた方言なのかもしれません。
「北瓜」はともかく、「東瓜」ということばは、どうやら存在しないようです。日本列島には中国人の目を見張らせるほどの瓜はなかった、ということなのでしょう。日本列島に生まれ育った私たちとしては、「なにを、たかが瓜くらい!」とうそぶくしかないようです。

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