以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0491
「雨」かんむりの下に「田」を書いて、どうして「かみなり」という意味の漢字になるのですか?
A
「田」という形を見ると、私たちはどうしても「たんぼ」のことを思い出してしまいますが、人間社会が複雑であるのと同じく、漢字の世界もそう単純ではありません。たとえば、Q0244で取り上げた「胃」のように、「たんぼ」とは無関係の「田」もあるのです。
「雷」の「田」も同様です。この字は篆文(てんぶん。篆書)では図のような形で書かれています。ここから分かるとおり、現在、「田」として書いている部分は、実は「田」を3つ重ねた形の省略形なのです。
では、この「田」3つが何を意味しているのかというと、大きく分けて、「なにかが積み重なっているようす」を表すという説と、「なにかが激しく活動しているようす」を表すという説とがあるようです。どちらにせよ、「雷」とは、くり返し訪れる激しい「かみなり」を表しているのだと説明できそうです。
上に掲げた篆文だけではありません。たとえば図のような字形もすべて、「雷」の古い字形だとされています。見つめていると目が回ってしまいそうですが、古代中国の人々は「かみなり」に対して、それほどに強い恐怖の念を抱いていたのでしょう。
と書きながらも、これらの古代文字を見ていると、私はなんとなくユーモラスな、なんだか楽しそうな雰囲気を感じてしまうのです。恐いはずの雷がおかしいなんて、なぜなんだろう、と考えていて、ふと、思い当たることがありました。
私のこの感覚は、ドリフターズのコントの影響なんでしょうね、きっと。