当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0489
「緑」は自然に関係がある漢字なのに、どうして「木へん」じゃなくて「糸へん」なのですか?

A

たしかにそうですねえ。「緑」といえばまっさきに思い出すのは木や草の色。「木へん」や「草かんむり」ではなくて「糸へん」だというのは、ちょっと奇妙な感じがします。
いやいや、でも待ってくださいよ。「糸へん」には、ほかにも色を表す漢字があります。身近なところでは、「紅」や「紺」。「紫」だってそうですし、「素」という漢字にも「白い」という意味があります。
漢和辞典の「糸へん」のところを眺めてみると、色を表す漢字がほかにもたくさん見つかります。ちょっとだけご紹介しておくと、「縹」は「はなだ色(うすい青)」ですし、「うすい赤」を表す「縉」という漢字もあります。
そうしてみると、どうやら「糸へん」は色と関係が深いようですね。それはおそらく、糸というものが織物、つまり衣服と密接なつながりがあるからでしょう。
きれいな衣服を身につけたい、という思いは、古今東西、変わらぬもの。その思いを満たすために、人類はさまざまな色に糸を染めて、カラフルな衣服を織り上げてきたのです。「緑」や「紅」、「紺」や「紫」といった色を表す漢字には、ファッションへの飽くなき思いが込められていると言っていいでしょう。
こういうことを発見するたびに、私はつくづく、漢字はおもしろいな、と思います。部首ごとに漢字をまとめて収録している漢和辞典は、そんなおもしろさの宝庫です。ぜひ、1冊、お手元に置いて、ひまつぶしに眺めてみてください。

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