以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0405
「禾(のぎへん)」に「重」と書いて、どうして「種(たね)」という意味になるのですか?
A
「禾(のぎへん)」は、名前だけは結構メジャーなようでいて、実は意味があまり知られていない部首の1つでしょう。名前からして、「木(きへん)」の親戚のような印象がありますが、実際にその表しているものは何なのでしょうか?
「禾」の甲骨文字は図のような形をしています。これは、穂を実らせた穀物の象形だと言われています。つまり、「のぎへん(ノ木へん)」の「ノ」の部分は、穀物の穂が垂れているようすなのです。収穫直前の田んぼで、さわやかな風に揺れながら、黄金色に輝くイネの穂をイメージするとわかりやすいでしょう。
そうすると、「種」という漢字は、穀物が実ったようすと「重」の組み合わせで出来上がっていることになります。ずっしりと重たいまでに実った穀物のイメージから、タネという意味を導き出すことは、そんなにむずかしいことではないでしょう。
いま説明したような「禾」の基本的な意味は、「種」以外でも、「秋」「稲」「穂」「穫」といった漢字からも確認することができます。また、「税」「稼」といった漢字に「禾」が付いていることからは、我ら東アジア農耕民族の歴史を思い起こすことができるでしょう。
それでは、「私」とか「秀」「秒」などにはどうして「禾」が付いているのでしょうか?気になる方は、たまには漢和辞典を調べてみてくださいな。