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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0130
たとえば「北斎」「寛斎」「萬斎」「専斎」のように、名前に「斎」という漢字を付けることがありますが、これはどのような意味なのでしょうか?

A

「斎」という漢字には、大きく分けて2つの意味があります。1つは、「斎戒沐浴(さいかいもくよく)」などというように「ものいみ」、つまり、宗教的な意味合いから心身を清めること、という意味です。もう1つは、「書斎」などというように、部屋という意味です。
後者の意味でこの漢字が用いられる場合、「~斎」という形で、ある部屋の名前を表す固有名詞となることがあります。そして、その部屋の持ち主のことを「~斎主人」などといい、さらには「主人」を省略して「~斎」だけで、その部屋の持ち主の雅号(ペンネームのようなもの)として使われることもあります。
浮世絵師の葛飾北斎の場合は、本名は川村鉄蔵とかいうそうですから、明らかに雅号です。また現在活躍中の狂言師・野村萬斎さんの場合も、プロフィールを見ると94年に萬斎を襲名した、とありますから、これも本名とはちょっと違います。このように、「斎」がつく名前は、もともと雅号としてスタートしたのだと思われます。
しかし、本名で「~斎」という名前がないわけではありません。デザイナーの山本寛斎さんが本名なのかどうかは、ちょっとわかりませんが、明治時代の医者で「日本衛生の父」といわれる長与専斎(ながよせんさい)の場合、事典で調べた限りでは、雅号は別にあって、「専斎」が本名なのではないかと思われます。
以上からしますと、本名としての「~斎」という名前は、一般的ではありませんが、おかしいわけでもありません。上記のほかにも戦国大名の細川幽斎、画家の富岡鉄斎、剣豪の伊藤一刀斎、儒学者の伊藤仁斎など、「~斎」という雅号を持つ歴史的に著名な人は、分野を問わずよりどりみどりという感じです。それを連想させるぶんだけ、カッコイイという見方もできると思います。ただし、そのかっこよさを周囲が理解してくれるかどうかは別ですが……。

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