以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0484
学校で、「離」という漢字の左下の部分は、「偶」の右下の部分と同じように書かなくては間違いだと聞いたのですが、本当ですか?
A
ややこしいので図で示すと、赤丸を付けた部分の違いですよね。
こういう場合にまず真っ先に参照すべきなのは、『常用漢字表』ですが、この表に掲載された「離」は、図の左側と同じく、問題の部分は「ム」の形をしています。また、18世紀に中国で編纂された『康熙字典(こうきじてん)』その他、いろいろと調べてみても、問題の部分を図の右側の赤丸の部分と同じようにしてあるものは、まず見当たりません。
では、問題の部分はカタカナのムと全く同じように書いてよいかというと、必ずしもそうとは言えません。なぜならこの部分は、Q0035でご説明したような理由で、一般に3画で数えるからです。そこで、画数通りに書こうとするならば、カタカナのムとは少し違って、左下の折れ曲がりの部分で一度切って書かなければならない、ということになります。学校の先生が「偶」と同じように、とおっしゃったのは、おそらく、このことではないでしょうか。
漢字には、「正確さ」を求めようとすると、このようにずいぶんと細かい点にまで注意を払わなくてはならない、という側面があります。ただし、その「正確さ」にこだわりすぎてしまうと、実生活では窮屈すぎてしかたがない、ということにもなりかねません。書き取りテストのときはともかく、それ以外ではあまりこだわりすぎないことも重要です。