当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0294
「荘」の右下の部分は、「士(さむらい)」と「土(つち)」のどちらで書くのが正しいのですか?

A

この種のご質問に対しては、いつもなら、別の字にならない範囲ならどっちでもいいんですよ、と申し上げるところです。でも「士(さむらい)」と「土(つち)」とは全く別の漢字で、意味するところも違いますから、今回ばかりは、細かいことにもこだわらざるを得ないのです。
「荘」という漢字をじっと見ていると、「くさかんむり」と「壮」の2つに分けられることがわかります。「荘」と「壮」はどちらも音読みがソウですから、「荘」は「壮」を音符とする形声文字であると予想されます。だとすると、「壮」が元になって「荘」が出来ているわけですから、このご質問は、「壮」について考えればよいことになります。
さて、「壮」を含む熟語には「壮大」「壮観」などがあるように、この漢字は「立派な」「さかんな」という意味を持っています。とすると、字源的に、「士(さむらい)」と「土(つち)」のどちらがこの意味にふさわしいのかを考えれば、結論は出るはずです。
そこまで考えてから漢和辞典を調べると、「壮」という漢字は「士(さむらい)」の部首に含まれていることがわかります。「士(さむらい)」はもともと、「一人前の立派な男性」を表す漢字で、「壮」の意味ともぴったり合います。従って、「壮」の右側は「士(さむらい)」と書かなくてはならず、「荘」の右下も同様に書かなくてはいけないということになります。
このように、漢字の形については、その漢字の成り立ちや意味を考えると、きちんとした答えが得られることがあります。漢和辞典をひっくり返しながらそんなことを調べると、複数の漢字の意味と形とが一緒に頭に入ってきて、漢字学習にはとても有効ですよ。一度、お試しあれ。

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