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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0293
「儚」は「はかない」と読みますが、「人」と「夢」でどうしてそんな意味になるのでしょうか?

A

現在では「夢」というと、「希望」と並列されて、なんだか明るい未来のことを表すことばのような気がします。そこからすると、「儚」という漢字が、「頼りにならない」とか「不安定な」といった意味の「はかない」という訓読みを持っているのは、なんだかヘンな気がすることでしょう。
しかし、「夢」は明るい意味ばかりを持っているわけではありません。おそらく「儚」を「はかない」と訓読みするのは、「人の世は夢のごとし」という考えから来ているのだと思います。この場合の「夢」は、「夢まぼろし」ということばがあるように、現実にはならないものを指しているわけです。
ちなみに、「儚」を「はかない」と読むのは、日本特有の読み方で、中国ではこの意味で「儚」を使うことはありません。では中国ではこの字はどういう意味なのかというと、それがまた、「おろか」という悪い意味なのです。
「夢」という漢字は、もともとは「暗い」「よく見えない」という意味を表す漢字でした。それが転じて、「眠っている時に見るゆめ」という意味で用いられるようになったのです。そこで、「人」と「夢」を組み合わせると、「よくわかっていない人」という意味になるのです。
なんだか悪いイメージの意味ばっかりで、夢も希望もない話になってしまいました。解釈の違いで、180度違ったイメージになってしまうことこそが、夢の夢たるゆえん、とでも言えるでしょうか。

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