当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0051
「舎」という字の「土」の部分をくずして書いた場合、どこまでが正しい「舎」の字だと言えるのでしょうか?

A

だんだんとお気付きのことと思いますが、当資料館の「正しい漢字」に関する考え方は、きわめて鷹揚(おうよう)です。特に手書きの場合は、基本的に「違う字にならなければOK」といういいかげんさです。
こう考える理由は、当資料館管理人の性格に依存する部分も少なくないのですが、文字というのは第一義的にはコミュニケーションの道具である、と考えているからです。そう考えると、文字の役割は内容を伝達することにあることになり、間違った内容を表すことにならない限り、文字そのものの形の多様性は許容されるのではないか、と考えているのです。
005101その観点から「舎」という字を考えますと、「土」の部分が少々変形していても、そう簡単には違う字にはなりません。いつもお世話になりっぱなしで恐縮なのですが、角川書店の『書道大字典』を調べてみましょう。古の名跡の中にも、図のように、この部分が「エ」のようになっているもの、「テ」のようになっているもの、「キ」のようになっているものなど、さまざまな字形を見いだすことができます。
ただし、話が印刷字体になってくると、ちょっと違います。印刷字体は1つの字母を利用して繰り返し再生産されるものですから、字体についても、それなりの注意を払うべきでしょう。こちらの観点から「舎」の字を見たときには、例の新字体と旧字体の問題が絡んできます。
005102「舎」は、戦後の国語改革以前は、「舍」という形が正しい印刷字体だとされてきました。これがいわゆる旧字体です。私たちの見慣れた新字体とどこが違うかはっきりさせるために、画像でお見せしておきます。ちなみに、漢和辞典における所属部首も、昔は「舌」部とされていたのです。
印刷字体においても、昔はむしろ「舍」の形の方が正しかったわけですから、「土」の部分の形にこだわるのは、歴史的必然があることではないように思います。というわけで、この字の場合、かなり崩して書いてもOK、と考えるのですが、このいいかげんさ、ご納得いただけますしょうか。

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