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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0453
漢字は5世紀に伝来した、と聞いたことがあるのですが、具体的にはどのような形で伝わったのでしょうか?

A

漢字の伝来については、以前、Q0004でご説明したことがあります。詳しくはそちらをご覧いただきたいのですが、遅くとも紀元3世紀頃には、日本人の中には、なんらかの形で漢字を使うことのできる人々がいたと推測されています。
では、ご質問にある「5世紀」というのがまったくのデタラメなのかというと、そうでもありません。『古事記』や『日本書紀』には、応神天皇の15年に、当時、朝鮮半島にあった百済(くだら)という国から王仁(わに)という人がやってきて、『論語』と『千字文(せんじもん)』という書物を初めて献上した、と記されています。この応神天皇の15年というのが、西暦の何年にあたるのかは議論のあるところなのですが、中では、5世紀の初頭にあたるという説が有力とされています。ご質問の「5世紀」とは、このことなのではないでしょうか。
もちろん、それ以前にも、貨幣や銅鏡などの文物という形、あるいは外交文書という形で、日本人は漢字に触れていたことでしょう。しかし、漢字で書かれた「書物」が「公式」に伝来したのは、この応神天皇の15年が最初であると言われています。日本が名実ともに「漢字の時代」に入ったのは、5世紀ごろであると考えていいでしょう。
『論語』に使用されている漢字は、約2000種類。『千字文』はその名の通り1000種類。重なりもだいぶあるでしょうが、少なくとも2000種類以上の漢字が、このとき、まとまって日本列島に上陸したことになります。
それから1500年以上が過ぎた現在、新聞や雑誌に日常的に使われている漢字の種類は、特殊なものを除けばだいたい2000から3000種類の間だと言われています。応神天皇の時代以降、日本人は進歩したのかしないのか。なんとも考えさせられる数字ですね。

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