以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0112
「漢語」と「和語」は、どのように識別したら良いのでしょうか? 和語は、訓読みの組み合わせだという規準だけで良いのでしょうか?
A
「漢語」と「和語」をそれぞれ字面だけから解釈しますと、「中国のことば」「日本のことば」となります。つまり、「漢語」とは、中国から入ってきたことばを指すわけです。中国から入ってきたことばは音読みされますから、音読みの熟語は漢語、訓読みは和語、と考えればよさそうです。
しかし、実は、音読みで読まれる熟語の中にも、日本で作られたものがあるのです。有名な例としては「火事」があります。これはもとは和語の「ひのこと」を漢字で表記するようになり、それを音読みすることによって成立したことばだと言われています。また、近代になって、西洋からいろいろな文物が入ってきた際に作られた翻訳語の中にも、たとえば「新聞」のように、音読みされながら日本製であるものが数多くあります。
そして、中には、日本で作られた後に中国に「逆輸入」された音読み熟語もあります。さらに、中国にも日本にもあって、どちらが先かわからないものもあります。
このように、熟語の日中関係はなかなか複雑なので、厳密な学問としてはともかくとして、一般的には、その出生をあまり問うことなく、音読みの熟語を漢語、訓読みの熟語を和語と読んでいます。ただし、熟語の中には、音読みと訓読みの混ざっているものもあります。「重箱読み」「湯桶(ゆとう)読み」といわれるのがそれです。これらは、訓読みを含んでいるので、和語に分類されるのがふつうです。
もちろん、以上は複数の漢字から成る熟語に関するお話で、和語には漢字で表記されないものがたくさんあることも、忘れてはいけません。