以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0060
「原」という漢字の中にある「白」は、「白」という漢字なのでしょうか、それとも「日」の上に点が付いているのでしょうか?
A
「原」という漢字は、現在では「はらっぱ」などの「はら」という意味で用いるのが一般的ですが、もともとは「みなもと」という意味です。実はこの字、図のように中が「泉」の形になっているのが本来の字形で、「厂」は「がけ」という意味、「泉」は崖の下からわき出る「いずみ」という意味、合わせて水のわき出る「みなもと」という意味を表していたのです。現在の「原」という字形は、これが簡略化されたもののようです。
と、ここまで読んで、ほんまかいな、と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「みなもと」という意味を表す漢字は「源」じゃないの?と。
おっしゃる通り!でも、そこには深い事情があるのです。最初は「みなもと」を表していた「原」という字ですが、やがて、その音が「はらっぱ」を表す字と似ていたことから、「はら」という意味も表すようになります。そうなると、1つの漢字が全然別の2つの意味を表すのはややこしい、「みなもと」の場合は、水に関係するんだから、「さんずい」を付けようよ、ということになって、「源」という漢字が新しく誕生したのです。
漢字の歴史の中では、こういったことはよくあることで、このような関係にある字を、「古今字」(ここんじ)と読んでいます。また、「原」は「源」の「原字」(げんじ)である、というような言い方もなされることがあります。
そこではからずも、この「原字」という熟語の「原」は、まさに「みなもと」という意味なわけで、ううん、話がややこしくなりすぎたような……。