当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0523
「条」は「條」の新字体だそうですが、明治初期の戸籍に「条」が使われているのを見たことがあります。いったい「条」はいつごろ生まれたものなのでしょうか?

A

新字体が制定されたのは、戦後の国語改革の際です。そう申し上げると、それまでは新字体の漢字など存在しなかったように思われがちですが、実際はそうではありません。新字体の多くは、それ以前から略字として使われてきていたもので、「条」もその1つです。
では、その「条」はいつごろ生まれたかとなると、なかなか簡単にお答できる問題ではありません。小社『大漢和辞典』を調べてみると、『宋元以来俗字譜(そうげんいらいぞくじふ)』という字書に「条」が載っている、と記されています。この字書は、宋王朝と元王朝の時代以降、民間で使われていた異体字を集めたもので、西暦で言えば、だいたい10世紀以降となります。中国では、遅くともこのころには、「条」が存在していたわけです。
052301では、それ以前には「条」は存在していなかったのでしょうか。そう思いながら、いつもお世話になっている角川書店の『書道大字典』を調べていたら、図のような字が載っていました。すこし崩されていますが、これは明らかに「条」でしょう。
この字の書き手は、何を隠そう弘法大師空海。「弘法も筆の誤り」ということわざで今もって名高い、名書家その人であります。そう知ってから見直すと、なんとも風格のある文字ですねえ!
空海が活躍したのは、だいたい9世紀の前半。そうして見ると、「条」は新字体とは言いながら、かれこれ1000年は使われてきた漢字だということになりそうですね。

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