以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0504
「剥奪」の「剥」の左半分は、2種類の形を見かけるような気がするのですが、どうしてですか?
A
たしかに2種類ありますね。小社『大漢和辞典』でも、図のような2つが掲載されています。
このうち、いわゆる「正字」とされるのは、右側のものです。左側のものは、その異体字なのですが、1983年にJIS漢字が改訂された際、こちらの方が登録されたので、現在のパソコンでは、「はくだつ」と入力して変換すると、こちらの「剥」が出てくるのがふつうです。
ところが2000年になって、国語審議会が『表外漢字字体表』を答申した際に、伝統的に「正字」とされてきた右側の字体が「印刷標準字体」として認定されました。その結果、近年の新聞などでは、こちらの字体の方が主流となってきていますし、2004年のJIS漢字の改訂では、こちらの字体も登録されるに至りました。
とはいえ、こちらの字体が入っているのは、JIS漢字の中でもやや特殊な「第3水準」と呼ばれる領域で、Windowsの最新のOSならば表示はできるものの、まだまだ、だれもが使えるような状態には至っていません。しばらくは、「剥」の時代が続きそうですね。