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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0457
「立春」は「春が立つ」、ならば漢字の順序として「春立」でないといけないのではないですか?

A

『古今和歌集』の最初の方に出てくる、紀貫之(きのつらゆき)の有名な和歌に、次のようなものがあります。

袖ひぢてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらん

夏、袖をひたしてすくい上げた水が、冬になって凍り、それが今、立春の風を受けて溶けていることだろう……。こういう歌を見ると、確かに、「立春」ではなく「春立」の方がいい、と考えるのもおかしな話ではありません。
ただし、中国古代の人々の感覚は、私たちとは違ったようです。その時代、王は人間界のよしなしごとだけではなく、星々の運行から季節の巡りまで、すべてを支配すると考えられていました。ですから、春も勝手にやってくるものではなく、「この日から春だ」と王が宣言するものだったのです。
つまり「立春」とは「春が立つ」のではなく、「春を立てる」という意味だと解釈すべきなのでしょう。もちろん、立春の日そのものは、太陽を観測することによって学術的に決められるものです。しかしその日、王が立春の祭りを行うことによって、はじめて春がやってくるとされていたのです。
では、「夏至」はどうなんだい?あれは「夏が至る」のではないのかい?
そういう意地悪をおっしゃる方もいることでしょう。でも、元来は昼夜の長さの差が一番大きくなる日を「至」と呼んだようです。つまり、「夏の至」が「夏至」、「冬の至」が「冬至」というわけです。
つっこまれる前に申し上げておけば、「春分」「秋分」だって同じこと。「分」とは、昼夜の長さが等しくなる日のことを指すのです。
それにしても、中国古代の王さまはたいへんですね。季節の巡りまで責任を持たされるわけですから。まったく、ご苦労さま、といったところです。

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