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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0419
「清める」と「浄める」の意味の違いについて教えてください。

A

「清」と「浄」のように、同じ訓読みを持つ複数の漢字のことを「同訓異字」と言いますが、この同訓異字はの使い分けは、説明を聞いても、わかったようでわからないようなことが多いのです。
というのは、同訓異字というのは、本来、日本語としては「きよめる」という1つのことばしかないのに、中国語ではそれに対応する漢字が「清」「浄」の2つある、といったような事情に由来しているからです。つまり、同訓異字の意味の違いは、もともと日本人が意識していなかったような、微妙なものである可能性が高いのです。
さて、「清」と「浄」を眺めて気がつくことは、どちらも「さんずい」が付いていることです。この2つの漢字が、成り立ちとしては、「水」に関係して「きよめる」という意味を持っていることは間違いないでしょう。でも、そんなことに気がついても、両者がますます似ていることがわかるだけで、何の役にも立ちません。
こういう場合、それぞれの漢字を含む熟語を集めてみると、何かがわかることがあります。「清」なら、「清純」「清涼」「清流」など。「浄」なら、「浄化」「洗浄」などでしょうか。これだけなら、たいして違いはありませんが、「浄」に特徴的なのは、仏教関係の熟語が多いということです。
「浄土」は極楽のことですし、お寺の賽銭箱には「浄財」と書いてあります。「浄刹(じょうさつ)」といえばお寺のことですし、「浄玻璃(じょうはり)の鏡」といえば、閻魔(えんま)大王が持っていて、人の生前の行いを映し出すという鏡のことです。
とすると、「浄」は少し宗教的な香りがする、と考えてもいいかもしれません。「清」と「浄」の使い分けは微妙ですが、あえて使い分けるとすれば、物理的な面を強調したい場合には「清」を、精神的な面を強調したい場合には「浄」を使う傾向がある、といえそうです。

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