当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0413
「異常」と「異状」の使い分けを教えてください。

A

この2つの熟語の違いは、「常」と「状」にあります。そこで、それぞれの漢字に着目することが、使い分けを理解するカギとなります。
「常」は訓読みでは「つね」、つまり「いつも」「ふだん」という意味を持つ漢字です。そこで、一般に「異常」ということばは、「ふだんと異なっている」という意味だと説明されています。
一方、「状」の方は、この漢字を含む熟語として「状態」「現状」などを思い浮かべることができます。こういった「状」には「ようす」という意味があり、「異状」とは、「異なったようす」という意味だと解釈することができます。
つまり、この2つの熟語は似たような意味を持ちながらも、「ようす」に焦点を合わせているぶんだけ、「異状」の方がより限定された意味を持っていると考えることができるでしょう。そこで、「異常」は万能選手的に使えますが、特に「ようす」にこだわって表現したい場合には「異状」を使うのがよい、ということになります。
たとえば、「館内をくまなく点検しましたが、イジョウはありませんでした」という場合、「異常」でも間違いではありませんが、「異状」を使った方がよいとされています。また、「異状」は「異なったようす」という意味の名詞として用いられるため、「イジョウな」という形容詞的な用法になる場合には、「異常な」としか書くことはできません。
なんともややこしいお話ですが、さてさて、「『異常』と『異状』の違いにイジョウな関心を示すという、精神のイジョウが認められる」という場合には、はたしてどちらにどちらの漢字を使ったものやら……。

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