以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0391
漢検の問題で、「諳厄里亜」をイギリス、「応帝亜」をインドと読ませるものがあったのですが、どうしてこんな読み方になるのですか?
A
漢検さんも、マニアックな問題を出すものですねえ。
私たちがふつう、イギリスと呼んでいる国は、実際のところは、イングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの地域から成り立つ連合王国です。そのうちのイングランドのラテン語名を、アングリアといいます。
もうおわかりになりましたね。「諳厄里亜」というのは、このアングリアを漢字で書き表したものなのです。「厄」をどうしてグと読んでいるのかは、よくわかりませんが、上海や香港あたりの方言の発音かもしれません。もっとも、私は北京語さえほとんど知らず、広東語などまったくわからないのですが……。
もう1つの「応帝亜」は、辞書を引き引き北京語の発音を調べてみると、謎が解けました。「応」はイン、「帝」はディと発音するのです。つまり、インディアに漢字を当てたのが「応帝亜」だ、というわけです。
このように、外国の地名・国名を表す漢字は、非常に複雑な成立のしかたをしています。私たちが現在なじんでいる地名・国名は、英語での発音に由来しているものが多いのでしょうが、漢字による外国地名の中には、「諳厄里亜」のようにラテン語由来のものさえあるのです。さらに、中国人が作った当て字も混じっています。日本製のものであれば、漢字を見ているうちにだいたい見当がつくものですが、中国製のものは、中国語を知らない日本人にはお手上げです。
どうやら、漢字検定を受検するためには、ラテン語や中国語の勉強もしておいた方がいい、なんてことになりそうです。私なんかには、ちょっと手の届かない世界のようですね。