当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0386
「博引旁証」という四字熟語を分解すると、「博(ひろ)く引用して旁(かたがた)証明する」となります。どこかおかしくないですか?

A

おかしく感じるのは、「旁(かたがた)」のところではないでしょうか。「かたがた」というのは「ついでに」という意味ですから、「広く引用したついでに証明する」では、なんのために引用しているのやら。意味をなしません。
そこで、『大修館四字熟語辞典』を調べてみました。すると、「『旁証』は、あまねく証拠を示すこと。『旁』は、ここでは、あまねく」と書いてありました。つまり、「旁」の意味を「かたがた」「ついでに」と解釈してしまっては間違いで、「あまねく」と解釈しなくてはいけないのです。
ここで気がついたのは、「博引旁証」が、いわゆる「互文(ごぶん)」になっている、ということです。
互文とは聞き慣れないことばかもしれません。わかりやすい例を挙げますと、「日進月歩」のようなものです。この四字熟語は「日に進み月に歩く」と分解できますが、別に「一日たったら進み、一月たったら歩く」というわけではありません。「日や月が過ぎるとともに進歩する」という意味なのです。つまり「日進月歩」とは「日月進歩」なわけで、このように、4つの部分から成り立っていて、真ん中の2つの順序を入れ換えるとわかりやすくなるような構造を持つ文を、互文というのです。
「雲散霧消」「神出鬼没」「東奔西走」など、四字熟語には、互文になっているものがたくさんあります。「博引旁証」の場合も、これを互文と考えて、「広くあまねく、引用したり証拠を挙げたりする」と理解するとわかりやすいでしょう。
それにしても『大修館四字熟語辞典』、「博引旁証」の「旁」にきちんと説明がつけてあるあたり、自分が担当した辞書ながら、さすがですね!かゆいところに手が届くとは、まさしくこの辞典のことを言うのでありましょう!!

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