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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0331
「五右衛門」はどうやったら「ごえもん」と読めるのですか? 「五(ご)右(え)衛(も)門(ん)」なのですか?

A

五右衛門といえば、現在では多くの人にとってモンキー・パンチの「ルパン三世」でしょう。斬鉄剣を手にあらゆるものを斬ってしまうこのニヒルな剣士は、安土桃山時代の大盗賊・石川五右衛門から数えて13代目という設定です。
さて、五右衛門ならずとも六右衛門でも七右衛門でも同じことですが、これらの「右衛門」は「えもん」と読みます。とするとたしかに、「右=え」「衛=も」「門=ん」と読むのかと思ってしまうのは、無理もありません。
種々の辞典を調べてみますと、「右衛門」とはもともと、役所の名前だったようです。奈良時代から平安時代にかけて、今の警察のような役割を果たしていた「衛門府(えもんふ)」というお役所がありました。「衛門府」には「左衛門府」と「右衛門府」の2つがあり、それぞれ「左衛門(さえもん)」「右衛門(うえもん)」と略称されたようです。
小学館の『日本国語大辞典』によれば、この「右衛門」がいつのころからか、「右」を省略して「衛門」とだけ呼ばれるようになったようです。そこで、「えもん」と言えば「右衛門」のことであり、逆に「右衛門」と書けばそれは「えもん」のことである、というわけで、「右衛門」を「えもん」と読むようになったのだと思われます。
もっとも、「衛門」が「右衛門」の略称として通用するようになったとすると、「左衛門」はどうなってしまったのか、という疑問が残ります。そこで、「衛」の古い音読みはワ行のヱであったことに注目して、「右衛門=uwemon」の最初のuとwが一緒になって「右衛門=wemon」となり、さらにwが落ちて「右衛門=emon」となった、と考えることもできそうです。
いずれにしても、「右衛門」は3文字1組で「えもん」と読むのであって、1文字ごとに分解できるものではないのです。
ちなみに、「右衛門」だけでなく「左衛門」も昔はよく名前に使われました。さらに念の入ったことに、「左右衛門」と書いて「さえもん」と読むお名前もあります。日本人の名前は、まことに奥が深いのです。

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