以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0277
「裏」は、「亠」の下に「田」を書いて「衣」を書くのですか? それとも「亠」の下は「里」ですか?
A
これは、「里」の方ですね。「裏」は「衣」と「里」から構成される形声文字ですが、この「衣」には、ちょっとおもしろい習性があります。この字は、別の漢字の構成要素となるとき、上下に分裂することがあるのです。
よく使われる漢字で、具体例を挙げてみましょう。「衣」の間に「口」が挟まって「哀」。「中」が挟まると「折衷(せっちゅう)」の「衷」。「保」が挟まると「褒(ほめる)」という字になりますし、「衰」も同じパターンの漢字です。
まるでサンドイッチみたいですが、「衣」は常にサンドイッチ現象を起こすわけではありません。「袋」「装」「裂」など、素直に下に居座っているタイプのものも、たくさんあります。
どうしてこんなことになるのか、詳しいことはわかりませんが、「衣」は、図の篆文(てんぶん)を見るとイメージしやすいように、衣服のえりもとを絵にした象形文字だとされています。上の「亠」の部分がえりの上側で、真ん中の「V」になっているところがえりの下側、というわけです。
とすると、サンドイッチ現象の場合、間に挟まれている要素は、ちょうど衣服のえりから顔を出したような位置にあることになります。つまり、「里」の場合、「里」に文字通り「衣」を着せると、自然と「裏」のような形になる、というわけです。
だからどうした、というわけではないのですが、そう想像すると、サンドイッチ現象の漢字は、着せ替え人形みたいで、楽しくありませんか?