以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0272
「外」という漢字を活字で見ると、「ト」の斜めになっている棒が、左上へ突き抜けているものが多いようですが、どうしてでしょうか?
A
これは確かに不思議な現象です。「外」という字は、字源的には「卜(ボク、うらない)」という字と関係があるとされています。であれば、問題の部分は「卜」と同じように書けばいいはずで、突き出す理由はありません。
しかし、明朝体を始めとして、ほとんどの活字書体では、この部分は突き出しています。一方、手書きでは突き出さずに書くことも多いので、私たち一般常識人は混乱してしまうのです。
この突き出しは、慣例であると申し上げる以外に、説明のしようがありません。おそらく、現在の活字字形の元になった、『康熙字典(こうきじてん)』の字形がそうであったから、現在でもそうなっているだけのことでしょう。確認のため、『康熙字典』の「外」の字を、図として掲げておきましょう。
このように、漢字の形の細かい部分は、突き詰めて考えていくと、理論に合わないことがたくさんあります。かといって、この世に存在する「外」という「外」を、すべて改めよと主張するのは、現実を混乱させるばかりです。
重大な問題で現実と対決するならわかりますが、この部分が突き出る突き出ないという程度で現実と対決するのは、割に合いません。ここは、現実に花を持たせておきましょうよ。漢字については、そういう妥協が必要な局面も、多々あるのです。