以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0234
「皈」という漢字は「帰」の異体字だそうですが、こんなに形が違うものがどうして異体字なのでしょうか?
A
確かに、一見すると形が違いすぎて、異体字だといわれても納得がいきませんよね。しかし、ちゃんと説明はあるのです。
この字については、異体字研究の大家・杉本つとむ先生の『漢字百珍――日本の異体字入門』(八坂書房)の中に、詳しい説明があります。それによれば、「帰」と「皈」のつながりは、次のように推測されます。
「帰」は旧字体では「歸」と書きますが、この左側の部分からまず「止」が省略され、さらには残された部分(「追」から「しんにょう」を省いた形)が、「自」へと変化しました。これがさらに「白」へと変化したのが、「皈」の字の左側なのだそうです。
では、右側の「反」はどこから来たのかというと、こちらは「かえる」という意味がもとになっているといいます。つまり、「反」は「返」と意味が似通っていますから、そこから「帰」の異体字の一部分として使われるようになった、というわけです。
以上は杉本先生の説ですが、異説もあります。それは、もともと「自(みずか)ら反(かえ)る」というところから、「自」と「反」を組み合わせて「かえる」と読む漢字があって、それが「皈」へと変化した、というものです。
納得がいきましたでしょうか。ちなみに、杉本先生のこの本では、さまざまな異体字について非常にわかりやすく説明がされています。小社の本ではありませんが、異体字についてご興味のある方には、ご一読をおすすめします。