以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。
Q0200
「科白」と書いて、どうして「せりふ」と読むのですか?
A
まず、「科白」という漢字の意味からご説明しましょう。「白」という漢字には、恋を「告白」したり、罪を「自白」したりするところからおわかりのように、「話す」という意味があります。一方、「科」の方は、中国語では、お芝居の動作という意味があります。つまり「科白」というのは、中国語で、お芝居での役者さんの動きとことば、という意味なのです。
次に、「せりふ」ということばのお話をしましょう。このことばは時には「セリフ」とカタカナで書かれることもあって、なんとなく日本人離れした雰囲気がありますが、れっきとした日本語です。小学館『日本国語大辞典』によりますと、語源ははっきりしませんが、能や狂言の世界から出たことばのようです。意味はもちろん、役者さんがお芝居の中で言うことば、です。
このように、中国語の「科白」と日本語の「せりふ」の間には、若干の意味のずれはあるのですが、明治時代になって、この両者が結びつき、日本語でも「せりふ」に対して「科白」という漢字を当てるようになったようです。このように、漢字2字以上に日本語1語を当てて読むことを、熟字訓といいます。
ちなみに、「せりふ」を「台詞」と書くこともありますが、「台詞」も実は中国語。お芝居の中で使われることばを意味しています。日本語として使うのは、こちらも熟字訓というわけです。