当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0122
「切り換え」と「切り替え」は国語辞典などでは同義語として扱われていますが、「きりかえスイッチ」はどちらを使いますか?

A

漢字の使い分けというのは、基本的には2つの側面があると思います。1つは、その漢字が本来はどのような意味を持っているのかを見極めて判断する、という側面。もう1つは、その漢字が日本語の中で慣用的にどう用いられているかから判断する、という側面です。
そこで問題の「きりかえ」ですが、これは「換」と「替」の使い分け、ということになります。しかし、この2字を上記の2つの側面から追求しても、なかなかハッキリした使い分けが出てこないのです。
国語辞典で同義語とされているとおり、日本語の中では慣用的に、この2文字は置き換えが可能です。もちろん、「置き換え」を「置き替え」と書くことはあまりないように、ことばによってはどちらかの漢字が定着しているものもありますが、全体を見渡した場合、両者に用法上の大きな違いは見あたりません。
次に、漢字の本来の意味を考えてみると、「換」は「手」へんが付いていますから、手に関係するイメージです。「替」は、「日」が付いていますが、これはニチという字ではなく、もともとは「曰」という字で、音読みエツ、訓読みで「いう」という漢字です。漢文で「子曰わく(しいわく)」などという時の「曰」で、つまり「言う」という意味ですから、「替」はことばに関係するイメージとなります。
そうすると、「換」は手でとりかえる、「替」はことばを交わしてとりかえる、といった意味なのかということになります。もちろん、もともとはそうだったのでしょうが、特に「替」の方はそういったイメージは早いうちに薄れてしまっています。
というわけで、「きりかえスイッチ」の場合も、やっぱり国語辞典に従って、どちらでもよい、ということになりそうです。どうしてもどちらかを選べ、とおっしゃるのならば、スイッチですから、やはり手のイメージがある「換」の方としておきましょう。

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