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漢字Q&A

漢字Q&A

以前の漢字文化資料館で掲載していた記事です。2008 年以前の古い記事のため、ご留意ください。

Q0121
数を表す漢字についてですが、Q0056を見ると、「恒河沙」以降は、10の8乗倍ごとに呼び方が変わっていくようですが、これでよいのですか?

A

そうなんですよね。Q0056に対するお答えを調べていたときに、私も気になってはいたんですよ。でも、ネタ本の『塵劫記(じんこうき)』をみると、「恒河沙」までは、たとえば「万億を兆と云う」のような注記が、「恒河沙」以降には、たとえば「万万極を恒河沙と云う」というような注記があって、意図的に違えていることは確かだと思います。
これは、Q0056でも触れたような、中国固有の数の呼び名は「載」までで、「極」以降はインドから輸入されてきたものであるらしい、ということと関係するのかもしれません。ただし、中国の古い算術書でも10の8乗倍ごとに呼び名が変わっているものもあったり、またそもそも漢王朝(紀元前2世紀~紀元後2世紀ごろ)以前は「十万」を「億」と呼んでいたりしたこともあったようで、このあたりはよくわからない部分が多いようです。
で、かりに「万万極」を「恒河沙」と呼ぶことを受け入れたとすると、「千極」の次はどうなるのか、という疑問が生じてきます。これはおそらく「一万極」「十万極」「百万極」「千万極」「恒河沙」となるのだと思われます。
1秒というのは、セシウム原子の固有振動数(いったいなんのことだ?)の91億9263万1770倍と定義されているらしいのですが、一方、宇宙の誕生から現在まで約150億年。そこで、宇宙が誕生してからこのかた、セシウム原子なるものが何回「固有振動」したのか計算してみると、約4350穣回という結果になります。
ここまで苦労してみても、「恒河沙」には遠く及ばないのです。このあたりになると、実際的な数字を表すというよりは、哲学の世界、空想の世界ですから、あまり追求してもしかたないのかもしれませんね。

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