当館では、『大漢和辞典』を始めとする漢和辞典を発行する大修館書店が、漢字や漢詩・漢文などに関するさまざまな情報を提供していきます。

新刊特集

新刊紹介

『医学をめぐる漢字の不思議』

大修館書店HP商品ページへ

医学用語の「不思議」を漢字からひもとく

「漢字文化資料館」の人気連載「医学をめぐる漢字の不思議」がついに書籍になりました!
「がんセンター」はなぜ「癌センター」と表記しないの?
「腔」の読みは「クウ」? 「コウ」?
複雑な漢字を読むと目が悪くなると考え、漢字や文字の改革に取り組んだ眼科医がいた!?
など、医学と漢字に関わる「不思議」や歴史をさまざまな文献資料を用いてひもときます。
書籍化にあたっては、新たな資料を参考に加筆、書き下ろしも。連載を読んでくださっていた方にも楽しんでいただけます。

著者メッセージ

 筆者は、医療関係者であるが、幼少期から何よりも漢字が好きだ。漢字が好きといってもいろいろあるが、難読漢字や検定試験にはさほど関心は強くなく、やはり見慣れない漢字を見たときのわくわく感というのが大きかった。見慣れない漢字は歴史上どこかの時点で作り出されたわけで、漢字を作る人か存在したということになる。どんな人が何を思ってどうやってどんな漢字をつくるのか、疑問が膨らんだ。<中略>
 職業として医療関係者への道に進むと、漢字にまつわる疑問は数多く出てきた。なぜこんな難しい字なのか、この字は誰が使い始めたのか、この用語の読みの「正解」は何なのか、この用語をこう読むのはどうしてなのか、などなど。周囲に聞いてもあまり気にしていない。教員に聞いても解決しない。本を読んでも書いていない。解決しようと思ったら自分でやるしかない。そこで文学部の講義を聴きながら、見よう見まねで調査方法を覚え、試行錯誤をしながら、不思議を一つでも紐解こうとしてきた。そうしてできたのがこの本である。

(「あとがき」より)

 

目次

はじめに
 医学用語の難しさ
 同音の漢字による書き換え
第一章 漢字を使った医学用語の略史
 漢方医学の用語
 西洋医学の翻訳
 明治時代
 大正から昭和初期
 戦後から現代
第二章 先人たちの試行錯誤
 一、生薬を一字で表す方法
 二、田代三喜の奇妙な生薬名
 三、文字も独特な安藤昌益
 四、漢字を再利用した大槻玄沢
 五、漢字の再利用にこだわった野呂天然
 六、体系的に文字を造ろうとした海上随鷗
 七、海上随鷗のアイディア造字
 八、漢蘭折衷の医師たちがつかった用語の漢字
 九、中国でも行われた医学用語の造字
 十、微生物名と造字
 十一、モルモットと海豚と海猽
 十二、近視と漢字の簡略化
 十三、眼科医の間で議論された漢字
 十四、石原忍と新国字
第三章 現代医学用語の生い立ち
 一、膵臓を表す文字の候補
 二、「腺」を表す文字の候補
 三、「腟」「膣」はどのように使われ始めたか
 四、「腟」「膣」はどちらが「正しい」のか
 五、「癌」の不思議
 六、「癌」と「がん」は違う?
 七、ゆれる「腔」の読み
 八、「肉芽」を「ニクゲ」と読むのはなぜか
 九、正解が定まらない「楔」
 十、「鼠径」部のなりたち
 十一、三つ子、四つ子などの別名
 十二、「橈骨」の「橈」とは何か
 十三、ペストの謎
あとがき
参考文献一覧
索引

*青字の部分は、クリックすると連載記事が読めます。

著者

西嶋佑太郎(にしじま ゆうたろう)
1991年、愛知県生まれ。京都大学医学部医学科卒業。現在、京都府内で精神科医として勤務するかたわら、日本漢字学会、日本医史学会などに所属し研究活動を行う。著書に『医学用語の考え方、使い方』(中外医学社)。「日本語医学用語の読みの多様性と標準化 ―「楔」字を例に―」(『漢字文化研究』第5号)で第9回漢検漢字文化研究奨励賞最優秀賞および平成27年度京都大学総長賞を受賞。その他、「江戸時代に生まれた医学用語」(『漢文教室』205号)、「海上随鷗の造字法」(『日本漢字学会報』第2号)、「人体の部位と病気の名前」(『日本語学』第40巻3号)など。

 

*著者紹介の情報は書籍刊行時のものです。

 

  • facebookでシェア
  • twitterでシェア